土のつぶろぐ

土の粒々から世界を考える!(ある土壌科学者チームの挑戦)

次世代の研究者を育てるためには?

今日からブログ更新のギアチェンジ。週一回を目指します!

トップバッター粒蔵です。

 

いきなり、土とも粒とも無関係ですが、遅ればせながらiPS細胞の山中さんネタで。大発見というだけでなく、山中さんのこれまでの挫折を含めた研究人生、周りへの感謝の念、ぶれない明確な目標など、素晴らしいの一言!

 

紹介したいのは、山中さんがアメリカを引き合いに出し「若手研究者にもっとチャンスを与え、シニア研究者にもフェアな(厳しい)評価を行う研究体制が必要」と訴えている下記の記事です。

http://sankei.jp.msn.com/science/news/121018/scn12101823230002-n1.htm

 

自分もこの意見に全く同感です。そして、これまでも同様の指摘をした人は多いと思います。

では、なぜ変わらないのか?

僕は、評価できる人が圧倒的に足りないからだと思います。研究申請書の量と質、評価者のレベル、評価にかける時間、科学に精通する官僚や政治家の割合には雲泥の差があると思うのです。これは研究者を雇用する際の評価(テニュア審査)でも同じ。

アメリカ(欧米全般?誰か知ってますか?)では、申請書の研究内容に精通する評価者を本気で探し、海外の科学者に頼むこともあります。申請書が不採択の場合、評価機関の担当者とその理由について直接ディスカッションすることが大切とのことです。研究者雇用の場合、対象となる専門分野の研究者は同じ大学には普通いないので、他大学の専門家をテニュア審査委員に入れることもあります。どちらも日本では聞いたことがありません。

日本では、創造的な科学者や研究プロジェクトを育てたいという気持ちに勝る理由(例:組織内バランス・和の精神?)がある気がします。

すべて英語化し、評価者にも海外研究者を増やし、弱肉強食の研究社会にすればすべて解決するという単純な話ではないですが、健全な競争原理をもっと入れるべきだと強く思います。

一方で、この十年で日本の研究評価体制も、徐々にですが、よい方向に変化してきたと思います。よって、科学者を目指す若い人達は高い志を持ってがんばれば、どの大学にいてもチャンスは得られやすくなってきたと思います。

フェアなルールさえあれば、好奇心旺盛で努力を惜しまない人は日本には多いので、もっと素晴らしい若手研究者が出てくるだろうし、日本の科学はもの凄く発展すると思います。サッカー選手にできて科学者にできない理由はない!

 

PS.日米ではそもそも研究予算の額が違うから?という理由もあるかと思ったけれど、それはなさそう。GDPに対する研究費は、防衛費を入れるとアメリカが日本の1.5倍だけれど、防衛費を除くと日本の方が多かった。

http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g80305a07j.pdf

やはり、研究評価システムというソフト面の問題が一番大きいというのが、現時点での僕の結論。つまり、フェアな評価システムをどうやって作るのかについて、もっと若手・中堅研究者も考えて、提言をするべきかもと思った次第です。これとペアで考えるべき大学教育システムについては別の機会に。

 

この話題に関係する本(他にも色々あるとは思うが)。

● 検証・なぜ日本の科学者は報われないのか(コールマン)

理系白書(毎日新聞科学環境部)

● 切磋琢磨するアメリカの研究者達(管裕明)