土のつぶろぐ

土の粒々から世界を考える!(ある土壌科学者チームの挑戦)

次世代最先端プロジェクト概要

私たちは、「地球炭素循環のカギを握る土壌炭素安定化:ナノ~ミリメートル土壌団粒の実態解明」という研究プロジェクトを行っています。日本学術振興会の最先端・次世代研究開発支援プログラム(グリーンイノベーション)に採択され、初めて可能になりました。プロジェクトの簡単な説明は、以下の通りです(以下でも公開されていますhttp://www.jsps.go.jp/j-jisedai/data/green/GR091_outline.pdf)。

 

(1)研究の背景

 土壌中に存在し、炭素を主とする有機物は、植物の生育に不可欠な養分や水を保持する働きを持っています。温暖化問題を背景に、大気中CO2の約2倍の炭素を貯留する土壌炭素が注目されています。土壌炭素はナノ~ミリメートルの微細な鉱物粒子と結合し、団粒と呼ばれる3次元構造を作って炭素の安定化を可能にしていますが、この分解・蓄積機構には不明な点が多く、地球炭素循環モデルの大きな不確定要因となっています。

 

(2)研究の目標

 本研究では土壌炭素の安定化の仕組みを解明することが目標です。その為に、世界で最も高い炭素蓄積量を持つ火山灰土壌と一般的な非火山灰土壌から、ミクロ・ナノサイズの団粒を分離し、下記の先端分析技術を駆使して自然界における炭素安定化機構を抽出します。そして、抽出された各安定化機構を模倣したモデル物質同士の生成反応実験を行い、生成した人工団粒(有機物と鉱物の複合体)の分解抑制作用を定量的に調べます。

 

(3)研究の特色

 近年飛躍的に向上している分光法(光の吸収・発光特性から物質の性質を調べる方法)技術を利用することで、ミクロ・ナノサイズの土壌粒子の、一粒の中に存在する有機物と無機物の形態を、その微細構造を破壊せず明らかにできる可能性があります。この解明と、同位体分析から得られる炭素の分解速度、および団粒生成実験の情報を組合せることで、土壌有機物研究が格段に進展すると考えています。

 

(4)将来的に期待される効果や応用分野

 土壌で普遍的に起こっている微細鉱物粒子と有機物の反応様式を解明することは、炭素循環モデルの精緻化に重要であると同時に、土壌の団粒化・安定性を高める技術の開発に繋がる可能性があります。つまり、土壌団粒の実体と土壌有機物安定化機構の解明は、地球温暖化予測の向上を図り、世界中で広く進行している砂漠化に対して土壌の養分・水分保持機能を回復させるための、必須な基礎的、基盤的な知見となります。