土のつぶろぐ

土の粒々から世界を考える!(ある土壌科学者チームの挑戦)

粒子の論文受理!

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秋も深まりつつある研究室に、良いNewsが舞い込みました。

粒子さんの論文がGeodermaという国際誌に受理されました!テーマはズバリ、団粒階層虚空蔵、もとい、団粒階層構造です。内容は粒子(つぶこ)自身に解説して貰うとして、今日は背景だけ紹介したいと思います。

 

土壌の団粒階層構造と土壌有機物は、切っても切れない関係にあります(過去の記事)。有機物が多い土壌は、団粒構造もよく発達しています。そして、両者とも土壌(そして陸域生態系)が健全に働くために大切です。

 

そのため、世界の様々な土壌を対象に、この両者の関係が調べられてきました。その中で、土壌学者が首をかしげていた疑問が1つありました。それは「多くの土壌有機物を含んでいるにもかかわらず、黒ボク土(Andisol、Andosol)にはなぜ明瞭な団粒階層構造が見られないのか?」という疑問です。

 

実際「黒ボク土は例外」だとか、「黒ボク土には団粒階層構造は存在しない」と断言している論文が国際誌に発表されており、理由として、黒ボク土は特殊な粘土鉱物から成るユニークな土壌だから、というものです。しかし、それは科学的な態度と言えず、粒蔵としては「逃げ」に思えていました。

 

そこで僕らはこの問題に正面切って取り組み、試行錯誤しながら、時には超音波発生装置を壊し、時には詩を口ずさみ、また時には頭をショートさせながら、非常に微細な粒子から出来ている非常に強固な黒ボク団粒の階層構造の成り立ちを明らかにすることができました。敵は強者でしたが、粒子(つぶこ)の粘り勝ちでした。

 

敵と言えば、論文の査読者の一人からは、多少の敵対心を感じました(これは、よくあること。非常に近い研究をしている場合に多いです)。研究の世界では、論文を投稿すると、匿名で複数の関連研究者が査読をします。それぞれの査読者(Reviewer)が、論文の妥当性・重要性を評価し、最終的な判断をEditorが下します。

 

今回の2名の査読者のうち、一人ははじめから論文の価値を十分認めてくれましたが、もう一人は長い批判を展開してきました。そうこられたからには、僕らは注意深く・万全の反論で応戦しました。それに対しても難色を示したらしく、最後はEditorが第三の査読者を呼び、その結果2対1で論文受理となりました。めでたし、めでたし。

 

もしそれらの批判に反論せず、言いなりになって論文を書き換えていたら、論文の価値は半分以下になっていたでしょう。必要とあらば冷静に反論する。自分の場合、それがある程度できるようになるのに、3ー4本の論文での査読者とのある程度「激しい」やりとりをする経験(そして付随する自信)が必要だった気がします。自信過剰も命取りだし、大事だと思うのは、どれだけ客観的にデータを見られるか、しっかり関連研究を読み込めているか、だと思います。

 

脱線気味の話を戻します。この研究の一番重要な点は、調べた黒ボク土に団粒階層構造があったことではなく、有機物と鉱物の両者に富む土壌であれば、「例外なく、普遍的に」団粒階層構造が形成されることが示唆された点、そしてこれまで別々に行われていた数mm~数十μmの比較的大きなスケールでの団粒の研究と、ミクロ・サブミクロスケールの土壌粒子(それ自体が集合体)の研究を、統一的に捉えることに成功したられる点捉えられる可能性を示した点(冷静になった2013-11-05に変更)、だと思っています。そういう意味で土壌有機物の分野において、それなりにインパクトがあると予想しているのですが、果たして反響は?

 

おっと、ちょっと熱くなってしまいました。最後の話は抽象的すぎてついて行けないかもしれないですね。夜も更けてきたし、これ以上密教的な話になってもいけないので、今日はここまでにします。