土のつぶろぐ

土の粒々から世界を考える!(ある土壌科学者チームの挑戦)

やっぱり子供は泥遊びが好きだった! アウトリーチ活動の報告

夏休みを取っていた訳ではないのですが、かなりブログをさぼってしまった。。気を取り直して、書き始めます。

 

私達の研究プロジェクトでは、「国民との対話」という活動が推奨されています。つまり、税金で行われている専門的な研究(その内容や成果)を一般市民に伝えて、科学の面白さ、大切さを伝えましょうと。

 

これは、アウトリーチ(Outreach)活動とも呼ばれます。専門家集団をインとした時の、それ以外のアウトにいる人達に、研究成果を届けるという意味です。例えば、アメリカの大学の農学部には、研究や学生指導・教育ではなく、アウトリーチ活動(農家や農業経営者が主な対象)を専門とする教員・スタッフがいます。

 

また、アウトリーチ活動は、狭い世界にいる研究者と一般市民の間にあるズレという現実を認識するのにも役立つし、自分の研究を知ってもらうことで、モーチベーションにも繋がりうると思います。

 

このブログもその試みの一つですが、私達の所属する研究所では7月27日に、夏休みに入った小学生と親達を対象に「のうかんけん夏休み公開」が行われました。

 

そこで粒蔵は、子供達に土の粒つぶの面白さ(出来れば、大切さ)を伝えられないかあれこれ考え、まったく違う3種類の土を触らせ、何かを感じて貰おうと思いました。そして、「粘土リボン」を作る競争をさせてみては!という名案がひらめいたのでした。

 

土壌学者が、新しい土に遭遇したときに先ずする事は、土を触ることです。そうです土性を調べるのです。そこで活躍するのが「粘土リボン」です。医者がまず聴診器で患者の状態を把握するように、現場の土壌学者は「粘土リボン」で土壌を診断するのです(ちょっと大袈裟かな?)。

 

どんな仕組みかと言うと、湿った土をコネコネし、細長いリボンを作り、それがどれ位長く延びるかから、土にどれくらいの割合で粘土が含まれているかが大まかに把握できるという訳です。

 

当日のために、粘土が含まれる割合が大きく違う3つの土(ザラザラな砂丘未熟土、粘土の多いネチネチ系の水田土壌、やや粘土の多い黒ぼく土のB層)をバケツに準備し、土をこね回すトレーや、手を洗う水をテーブルの上に用意しました。

 

さて当日です。先ず分かったことは、子供に「粘土リボン」を作らせるなんて無理!ということ。確かに、子供はそんな型にはまった作業はしないよなー。というわけで、急きょ「この色や触り心地の違う3つの土をコネコネして、好きなもの作っていいよー」と戦略変更。

 

f:id:soil_aggregate:20130727123945j:plain

すると、どんどん子供がやってきました。特にお団子作りが一番の人気でした。皆さんも経験があると思います。そう、いまでも子供はやっぱり土遊び・泥遊びが好きだった!とっても嬉しくなりました。

 

ちなみに、上の写真の後方のテーブルでは、色々な色の土をシャーレに入れて、土の色を調べてみよう!ということもしました。以前の記事にあるとおり、土の色は世界共通の「色の物差し」で測ることができることを知って貰おうという企画です。

 

しかし、低学年の子供には、色を見るより、触る・作るほうが圧倒的に人気でした。そして、こんな作品達を作ってくれました。

 f:id:soil_aggregate:20130727161119j:plain

 

 また、この3つの土それぞれを水の入った瓶に入れて、がしゃがしゃと振ってから静置し、大きい粒ほど早く沈み、細かい粒ほど浮遊してなかなか沈まないことも教えました。泥遊びに没頭してて、あまり聞いて貰えなかったんだけどね。。。

 

さらに、粒子に泥染めを伝授して貰い、初めて自分で染めたTシャツも壁に飾りました。これに反応してくれるお母さん達が結構いたので、来年はそういうアウトリーチもいいかなと思ったり。

 

お母さんと言えば、子供を連れて行き来する親の中には、泥遊びは勘弁!と子供にやらせたがらない親もいれば、子供が「汚そう」と躊躇してても、「泥遊び、気持ち良いからやってごらん!昔よくやったなー!」という親まで、色々な親子を見られたのも、楽しかったです。

 

とにかく、喜々と土をコネコネする子供達の感受性と目の輝きに、大満足の一日でした。そして一句できてしまった。

f:id:soil_aggregate:20130727161136j:plain

 

PS. 今回のアウトリーチ活動をするのに、下記の本はとても参考になりました。最終的には、本に載っているような実験は出来なかったけれど、小中学生相手に土の不思議さ、面白さを感じて貰ういろいろな実験や観察法が、イラスト入りで書かれています。

土をどう教えるか〈上巻〉―現場で役立つ環境教育教材

土をどう教えるか〈上巻〉―現場で役立つ環境教育教材

土をどう教えるか〈下巻〉―現場で役立つ環境教育教材

土をどう教えるか〈下巻〉―現場で役立つ環境教育教材