土のつぶろぐ

土の粒々から世界を考える!(ある土壌科学者チームの挑戦)

土壌学の用語の感覚的な説明シリーズ: 【土性】

連休ボケか連休明けの忙しさからか、しばらくまた書けませんでした。まず、前回のエントリーに出てきた用語の説明をもう少ししておきます。

 

どの学問もおなじかもしれませんが、土壌学の専門用語は、なかなかとっつきにくく、難解で、密教的にすらなります。 密教的な部分も粒蔵は好きなのですが(うち真言宗だし?)、その難解さは、土に興味を持つ一般の人達がもう少し自分で勉強しようと思った時に、大きな壁になるんじゃないかと思います。

 

非力ながら、このブログが気軽に土を学ぶための多少の足しになればと思ってます。興味のある用語の説明リクエスト、いつでも歓迎です。

 

【土性、どせい、Soil Texture】

いきなりこの用語を音だけで聞くと、空に浮かぶ美しい惑星や、土の中にいるかもしれない精霊を想像するかもしれませんが、違います。土が内在する根性でもありません。土の「粒つぶ感」、より具体的には「大きさの違う粒つぶ粒の混ざり具合(存在割合)」を示す用語です。

 

用語の使われかた: この土は「粘土質」「シルト質」あるいは「砂質(さしつ)」だね、というような言い回しがよくされます。では、それぞれを感覚的に説明してみましょう。

 

●粘土質(clayey): 図工でつかう粘土と同じく、粘土質の土には「ねっちり感」があります。粘土粒子とは2マイクロメートル以下の粒です。「コロイド」粒子という言葉もたまに聞くと思いますが、だいたい同じものを意味します。

 

●シルト質(silty): シルトが多い土には、少し水を含ませてこねくり回したとき、指と指の間に「なめらか感」があります。シルトは、学派により少し違いますが、2~20(あるいは50)ミクロメートルの大きさの粒子です。

 

●砂質(sandy): 砂の多い土は、砂場のように「ジャリジャリ感」満載です。砂はシルト粒子以上の粒です。

 

育てる作物や木の種類にもよりますが、この3つのサイズの粒つぶが適度に混ざった土は、植物の生長がよく、有機物も比較的多く含まれ、団粒構造も発達するため、一般に肥沃な土と呼ばれます。シルト質の土は、ちょうど中間的なサイズの粒を多く含み、また多少は粘土や砂も含んでいるので、一般的にもっとも肥沃な土壌になりやすいと言えます。

 

あまり粘土サイズの粒子ばかりだと、土はねっちり・どっしりしすぎます。水はなかなか染み込まないし、時間かけて染み込んだ水はなかなか乾かない。それは粒と粒の間の隙間が少ないからです。また、そのために、シャベルで掘ってみると、とても重く(ヘビーに)感じます。

 

一方で、粘土を多く含む土は、土壌有機物を多くため込む傾向があります。また土の物理的、化学的性質の多くは、その土がどれくらい粘土を含むかによって決まるので、粘土粒はなかなか侮れない存在なのです。粘土鉱物学という学問すらあるのです。

 

それにしても、砂粒のほうが、シルト粒や粘土粒よりも、市民権を得てますね。もっと小さな粒たちの権利拡大のために、つぶやき続けなければ。大気の世界では、あまり飛ばない砂粒よりも、2.5ミクロメートル大の粒であるPM2.5が有名になりましたね。PM2.5は限りなく粘土に近いシルト粒ですね。遠くから飛んでくる小さな粒つぶ達と、土壌や植物との間には、すごく面白い繋がりがあるので、それはまた後日。

 

PS. 英語での土性である"Soil Texture"のTextureは、織物や素材の質感という語感の言葉。欧米人の土壌への愛が感じられます。そのためか、日本語の「土性」はちょっと味気ない感じがしてました。でも、これはこれでなかなか味のある言葉だと最近は感じてます。

 

追記(2013-8-10):「土性」という用語の歴史的背景について、土壌学の大先生が書かれていました(久馬2009)。久馬先生もこの用語に違和感を感じてたとは! この論文を掲載している「肥料科学」はなかなかハードコアな学術誌で、土壌学の歴史的側面を中心とした読み応え、噛み応え抜群の論文が、他にも沢山あります。粒蔵にはなかなか歯が立たないが。。。