土のつぶろぐ

土の粒々から世界を考える!(ある土壌科学者チームの挑戦)

来日中の土壌化学者の帰国、土壌団粒と分解性

来日中の土壌化学の教授がアメリカへ帰られました。北東部の寒い所から来ていたので、来日直後から「暖かいねー」とニコニコでした。別れる時も、とても楽しかった・有意義だったとビックスマイルで帰って行きました。一緒に実験もやったので、何かと忙しかったけれど、僕らも楽しかったし、とてもよい勉強になりました。ありがとう!

粒蔵の経験では、日本に比べてアメリカの先生は、楽天的で笑顔とユーモアを絶やさない人が圧倒的に多い気がします。そういえば、先輩研究者のHさん(日本人)に、粒蔵は英語になるとやけにおしゃべりになり、ジョークが飛ぶと指摘され、新鮮でした。確かに、そうだ。言語≒文化ということか。たとえ締め切りに追われていても、うまい日本語が浮かばなくても、やはり科学者たるもの、ユーモアとスマイルを忘れたくないと思った次第です。

来日していた二人は、世にも珍しい土壌化学者カップルで、SさんのほうはJSPSの招へい制度を利用して粒蔵が招き、Tさんはサバティカルとして一緒に来られました。先週は京都大学で、土壌有機物そして土壌リンについてセミナーを行いました。教授から学生まで30名ぐらいが参加してくれ、英語にもかかわらず、ディスカッションも盛り上がりました。流石、京大。

思えば、土壌の粒粒と土壌有機物の関係について初めてじっくり読んだ論文は、粒蔵がメーン州立大学の博士課程1年生でだったときの、Sさんの授業でした。なんと、13年も前のこと!

土壌団粒に住む微生物たちの呼吸速度(つまり有機物の分解速度)は、団粒を物理的に壊すことで高まることを示したGregorichらの研究だったと思います。団粒構造の中にある美味しいエサ(有機物)は、多くの微生物にとって手の届かない場所にあることを、単純で説得力のある実験によって示した1989年の研究。引用の多さ(154回、Google Scholar)からも、そのオリジナルさが窺えます。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1365-2389.1989.tb01306.x/abstract

個人的には、土壌団粒構造と土壌有機物の分解性の関係について、1989年以降に大きなブレークスルーはない気がしています。同位体分析や、固体分析手法による複雑な団粒の物理構造の評価などを組み合わせ、その関係解明を目指すのが、現在のプロジェクトの大きな挑戦の一つです。